そんな問いが頭をよぎる午後でした。
2024年8月4日、札幌ダート1700mで繰り広げられた
第29回エルムステークスは、砂塵を蹴散らす一瞬に
競馬の本質を教えてくれました。
湿った土の匂いが鼻孔をくすぐります。
ビアガーデンの甘苦いホップ香と屋台のジンギスカン。
観客席からは笑い声と歓声が交じり合い、
ピリッと冷えた風がスタンドを吹き抜けました。
そんな中、発走時刻の15時35分を告げるファンファーレ。
スタート直後、先行勢は無理をせず好位追走。
600m通過は55秒2。ペースはやや落ち着きました。
向こう正面で1000m通過1分19秒0と中間ラップ。
先頭集団に疲れの色が見え始めたその時、
横山和生騎手騎乗のペイシャエスが動きを見せます。
直線残り400mで大外へ持ち出すと、
砂煙を蹴立てながら瞬発力を爆発。
上がり3Fは43秒3をマークし、後続を突き放しました。
勝ち時計は1分44秒0。完璧なタイミングでした。
・600m通過:55秒2
・1000m通過:1分19秒0
・上がり3F:43秒3
・勝ちタイム:1分44秒0
このラップ構成が、砂上のドラマを生み出しました。
5番人気ながら脚質を生かした抜群の立ち回り。
母リサプシュケ譲りの根性を見せた牡馬・ペイシャエス。
父エスポワールシチー系のスタミナと切れ味が融合。
小西一男調教師は、開幕週の馬場状態を見据え、
この一戦に完璧に仕上げてきました。
横山和生騎手は、「時計よりも馬のフィーリング重視」と語り、
ラスト200mでの追い比べでも冷静に追い出しを待ちました。
「砂を噛ませた瞬間に反応した」と微笑むその表情に、
実況席からも「名手の職人技」と賛辞が飛びました。
2着ドゥラエレーデは先行して粘り込みを図り、
3着テーオードレフォンは長い直線を利して差を詰めました。
4着以下もそれぞれのドラマを描きつつ、
ペイシャエスの一閃を際立たせました。
砂煙が舞い上がる直線。
蹄音のリズムが鼓膜を揺らし、
パドックの木々を渡る風が馬体をなでる。
屋台の甘辛いタレが口中に広がる頃、
ゴール板の赤ランプが点灯しました。
2024年の夏、札幌は観光と地方創生のモデル地。
競馬場周辺には地元クラフトビールの樽が並び、
新たなファン層の獲得へと競馬界も舵を切っています。
SNS映えするフォトスポットが増え、
若い世代の関心も高まりつつありました。
小西調教師は「暑さと馬場の重さが課題」と語り、
特製ウォームアッププログラムを実施。
騎手と調教助手が早朝から汗を流し、
その努力が勝利へとつながりました。
「砂の舞台は、真の実力を映す鏡」
ペイシャエスの走りは、それを証明しました。
ファンは歓喜と驚きを胸に、次走への期待を募らせます。
あなたも次回、札幌の砂煙の中で、
歓声と蹄音が重なる瞬間を体感してみませんか?
静かな余韻を残しつつ、
砂塵はゆっくりと舞い戻ります。
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