2024年七夕賞回顧|晴天に映える赤の閃光、レッドラディエンスの重賞連勝
幅広い世代が詰めかけたスタンドには、夏の陽光を浴びた熱気が満ちている。優勝を飾ったのは、2番人気のレッドラディエンス。
鮮やかな赤い勝負服をまとった戸崎圭太騎手が、直線で鋭い抜け出しを見せた。
時計は1分57秒9。
2着キングズパレスに2馬身の差をつける完勝劇だった。
中団から炸裂した一閃、終始安定の末脚
ミドルペースで流れた前半。
レッドラディエンスは好位の中団からリズム良く追走した。
芝の重さを感じさせないピッチ走法で、最終コーナーを迎えると戸崎騎手が軽く仕掛ける。
直線では内ラチ沿いを鮮やかに突き、観客席を震わせる歓声が空気を揺らした。
ほとんど間を割って差し切るその脚は、まるで風を突き破るかのようだった。
勝因は「福島適性」と「一完歩の踏み込み」
父ディープインパクト譲りのしなやかな脚捌きと、452kg+6kgの馬体増が示す充実度。
葵ステークスの勝利から間隔を詰めた仕上げも、無理なく功を奏した。
「馬の状態が良く、福島の小回りが合った」と戸崎騎手。
安田翔伍厩舎の緻密な調整が、広くないコースを味方につけたと言っていい。
古豪の意地、伏兵の猛追
2着のキングズパレスは1番人気。
前走新潟大賞典2着の実績馬が、松岡正海騎手の騎乗で粘り強く先行したが、最後は鋭い差しに屈した。
3着のノッキングポイント(8番人気)は、杉原誠人騎手とともに後方から外へ持ち出し、最後は首差で馬券圏内へ。
一瞬の踏ん張りが、大波乱の要因となった。
爽やかな晴天と緑の芝、五感が蘇る福島の一日
午後2時、青空の下に広がる芝は鮮やかな緑色を放つ。
重馬場とは無縁の「良」発表。
軽やかな蹄の音がスタンドまで届き、芝の香りが風に乗って漂ってきた。
気温は25度前後。
観客の笑顔が太陽の光を反射し、胸元に涼しい風が抜ける。
見渡す限りの夏景色が、レースの緊張感をいっそう引き立てていた。
時代の風を背に駆けた夏の一戦
2024年夏。
コロナ禍を乗り越え、競馬場には家族連れや若いカップルが戻ってきた。
新しい資本主義を掲げる岸田文雄政権下、経済はゆっくりと息を吹き返している。
同時期、パリオリンピックへの期待が高まり、スポーツ界全体が夏を前に熱を帯びていた。
福島のスタンドにも、その躍動感が確かに息づいている。
結び──願いを超えた一撃
七夕賞は、願いを込めて馬券を握る人々のための舞台。
その願いが、レッドラディエンスの一閃で現実となった。
赤い閃光は、夏の青空を切り裂き、観客の胸に忘れ難い景色を描いた。
また来年、この福島の芝に新たな物語が刻まれることを信じたい。
コメント